「休職したら終わり」は本当?医師が教える復職成功のポイントとキャリア継続法

「休職したら終わりだ」「一度休んだら会社には戻れない」—そんな言葉を聞いて休職を躊躇していませんか?現代社会では、うつ病や適応障害などのメンタルヘルス不調により休職を考える方が増えています。しかし、多くの方が誤解や不安から必要な休養を取ることを躊躇し、結果的に症状を悪化させてしまうケースが少なくありません。
実際のデータによれば、休職は決してキャリアの終わりではなく、むしろ心身の回復のための必要なステップです。この記事では、「休職したら終わり」という誤解を解き、実際の復職成功率や休職中の過ごし方、そして復職に向けたポイントを医学的な視点から解説します。
心身の健康を取り戻し、より充実したキャリアを築くためのヒントをご紹介していきましょう。
休職したら終わりと言われる3つの理由

「休職したら終わり」という言葉を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。特にメンタル不調で休職を考える際、この言葉が頭をよぎり、休職の決断を躊躇させることがあります。なぜこのような言葉が広まっているのでしょうか。
休職に対する世間の誤解
多くの人が「休職」に対して、「弱い人がするもの」「仕事ができない人の言い訳」といった偏見を持っています。こうした誤解が「休職したら終わり」という言葉につながっているのです。
しかし実際には、休職は心身の回復のために必要な医学的治療の一環であり、弱さではなく自分の健康を守るための賢明な判断です。
職場で広がる噂と不安
休職すると「会社で居場所がなくなるのでは」「評価が下がるのでは」という不安を抱きがちです。実際、休職中に仕事が誰かに引き継がれ、復職後に元の業務に戻れないケースもあります。
また、同僚からの視線や上司の対応が変わるのではという不安も「終わり」というイメージにつながっています。
自分自身の中の恐れと罪悪感
休職を選ぶ際、「自分だけ休むのは申し訳ない」「迷惑をかけてしまう」という罪悪感に苛まれることがあります。また「休んでいる間にスキルが落ちてしまう」「取り残されてしまう」という焦りも生じます。
こうした気持ちが、休職を「キャリアの終わり」と感じさせる原因になっています。
休職したら終わりではない!データで見る復職の現実

実際のデータを見てみると、「休職したら終わり」という認識は必ずしも正しくないことがわかります。
復職成功率と実態
独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)が2012年に実施した調査によると、過去3年間における病気休職制度利用者の復職率の平均値は51.9%となっています。つまり、休職者の約半数は職場に復帰しているのです。
メンタルヘルスの理由での休職者の退職率は42.3%であり、半数以上の人が何らかの形で職場に復帰していることを示しています。
出典:独立行政法人 労働政策研究・研修機構『過去3年間で半数の企業に休職者が発生。復職率は約5割
治療と仕事との両立の課題、「休職者の復帰後の仕事の与え方、配置」がトップ』(2025年5月時点)
うつ病・適応障害の回復見込みと期間
うつ病や適応障害は適切な治療と休養を取ることで回復が見込める疾患です。特に初期のうつ病であれば、3〜6ヶ月の休養と治療で症状が改善することが多いとされています。
適応障害も環境調整やカウンセリングによって回復するケースが多数報告されています。
休職が心身の回復に必要な医学的根拠
精神疾患の場合、ストレス要因から距離を置くことが回復の第一歩です。脳の疲労回復には「休息」が不可欠であり、医学的にも休職は単なる「逃げ」ではなく、治療の重要な一部と位置づけられています。
無理を続けることでかえって症状が悪化し、復帰までの期間が長引くリスクもあります。
休職のメリットと適切な休職期間の決め方

休職には様々なメリットがあります。それを理解した上で、適切な休職期間を考えましょう。
心と体を回復させる時間的余裕
休職の最大のメリットは、業務のプレッシャーから解放され、自分のペースで回復に専念できることです。特にうつ病や適応障害の場合、心身が疲弊している状態で仕事を続けると症状が悪化する一方です。
休職することで心と体に回復の時間を与え、エネルギーを取り戻すことができます。
職場環境から離れることで得られる気づき
休職中に職場から離れることで、客観的に自分の働き方や環境を見直すきっかけになります。「なぜ体調を崩したのか」「どんな働き方が自分に合っているのか」といった気づきが得られることも、休職の重要なメリットです。
この内省の時間が、復職後の再発防止にもつながります。
産業医と相談して決める最適な休職期間
休職期間は症状の重さや回復の速度によって個人差があります。主治医や産業医と相談しながら、無理のない期間を設定することが大切です。
一般的にうつ病の場合、最低でも3ヶ月程度の休職が推奨されていますが、焦らずに自分の回復状況に合わせて判断することが重要です。

休職中の過ごし方で復職の成功率が変わる

休職中の過ごし方は、その後の復職の成否に大きく影響します。適切な過ごし方を心がけましょう。

休職期間中にやるべきこと
まずは心身の回復を最優先にしましょう。十分な睡眠、バランスの良い食事、軽い運動など、基本的な生活習慣を整えることが大切です。また、定期的な通院を欠かさず、医師の指示に従うことも重要です。
症状が落ち着いてきたら、趣味や軽い家事など、無理のない範囲で日常的な活動を取り入れていきましょう。
避けたほうが良い行動パターン
休職中に避けるべき行動もあります。まず、仕事に関連する連絡やメールのチェックは控えましょう。また、「早く良くならなければ」という焦りから無理をすることも避けるべきです。
SNSでの過度な情報収集や、他人と比較して落ち込むこともメンタル回復の妨げになります。休職は治療の一環と考え、回復に集中する時間と捉えましょう。
リワークプログラムの活用方法と効果
症状が改善してきたら、リワークプログラムの利用を検討してみましょう。リワークプログラムは、医療機関などで行われる職場復帰のためのリハビリプログラムで、生活リズムの改善、ストレス対処法の習得、集中力や対人関係能力の回復などを段階的に行います。
このプログラムを利用することで、スムーズな職場復帰の確率が高まります。
休職中の給料と傷病手当金について知っておくべきこと

休職中の経済面の不安を軽減するために、給与や手当について正しく理解しておきましょう。
会社の規定による給与の扱い
休職中の給与は会社の就業規則によって異なります。完全に無給となる場合もあれば、一定期間は給与の一部が支給される場合もあります。まずは自社の規定を確認しておくことが重要です。
傷病手当金の申請手続きと支給条件
健康保険に加入している場合、一定の条件を満たせば傷病手当金を受け取ることができます。傷病手当金は、仕事を休み始めて4日目から最長1年6ヶ月間、標準報酬日額の3分の2相当額が支給されます。
申請には医師の証明が必要ですので、早めに手続きを進めることをお勧めします。JILPTの調査では、傷病手当金の受給勧奨を「している」とする企業は83.2%と高い割合になっています。
休職中の生活を支える経済的なヒント
傷病手当金以外にも、状況に応じて利用できる制度があります。例えば、障害年金や自治体の医療費助成制度などです。また、生命保険に加入している場合、特約によっては入院給付金や就業不能保険金が受け取れる可能性もあります。
経済的な不安がある場合は、医療ソーシャルワーカーや社会保険労務士に相談することも有効です。

職場復帰のタイミングと成功のポイント

復職のタイミングや方法も、成功の鍵を握ります。慎重に準備を進めましょう。
復職の準備が整ったサイン
復職のタイミングは焦らずに判断することが大切です。以下のようなサインが見られたら、復職を検討する時期かもしれません。
- 基本的な生活リズムが整っている
- 家事や身の回りのことが無理なくできる
- 集中力や判断力が回復してきた
- 通勤時間帯に外出しても疲れすぎない
- 仕事に対する意欲が戻ってきた
これらの兆候が安定して2〜4週間続いたら、主治医や産業医に相談しましょう。
上司・人事との復職面談での話し方
復職前の面談では、自分の状態を正直に伝えることが重要です。無理に「完全に回復した」とアピールするのではなく、現在の状態や配慮が必要な点を具体的に説明しましょう。
また、段階的な復帰(時短勤務からのスタートなど)を希望する場合は、あらかじめ医師の意見書などを準備しておくと良いでしょう。
段階的に仕事量を増やしていくコツ
復職直後は、フルタイム・フル業務での復帰ではなく、時短勤務や業務制限からスタートするのが理想的です。最初の1〜2週間は体調や業務へのなじみ具合を観察し、問題がなければ徐々に勤務時間や業務量を増やしていきましょう。
焦らず、自分のペースで回復を続けることが、長期的な職場復帰の成功につながります。
まとめ:不安を感じたら専門医へご相談ください

「休職したら終わり」という言葉に惑わされず、心身の健康を第一に考えることが大切です。データからも明らかなように、休職後に多くの方が職場に復帰し、キャリアを継続しています。休職は決して「終わり」ではなく、より健康的に働き続けるための「一時的な休息」なのです。
心身の不調を感じたら、早めに専門医に相談することをお勧めします。惟心会のメンタルクリニックでは、うつ病や適応障害などの専門治療はもちろん、復職支援や再発防止のためのアドバイスも行っております。休職に関する不安や悩みがある方は、お気軽にご相談ください。
適切な治療と休養で、多くの方が心身の健康を取り戻し、充実した職業生活に戻られています。あなたの心と体の健康を最優先に考え、必要な時には休息を取ることを恐れないでください。それは決して「終わり」ではなく、より良い未来への第一歩となるはずです。