インフルエンザの予防内服(予防投与)とは?メリット、薬の種類、副作用、費用や向いている人の特徴を解説

インフルエンザ対策といえばワクチン接種が基本ですが、「家族が感染した」「来週に重要な試験がある」「職場で流行が始まった」といった時、どうすればいいか迷ったことはありませんか?
そんなときに選択肢となるのが、抗インフルエンザ薬をあらかじめ服用して発症を防ぐ「予防内服(予防投与)」です。
ワクチン接種を受けても抗体ができるまでには時間がかかるため、「大切な予定を前に確実な対策をしたい」「重症化のリスクが心配」と思う方にとっても心強い方法です。
そこで本記事では、予防内服の仕組みやメリット、使用される薬の種類や特徴、副作用や費用まで、これを読めばすぐに理解できるよう詳しく解説します。
インフルエンザの予防内服とは?基本の仕組みと役割

インフルエンザ予防内服(予防投与)とは、インフルエンザにかかる可能性が高い状況で、抗インフルエンザ薬をあらかじめ服用し、発症を防ぐ方法です。
通常、抗インフルエンザ薬は発症後の治療に用いられますが、予防目的で使用することで、ウイルスが体内に入った際の増殖を抑え、発症リスクを下げることができます。
この方法は医師の判断のもと処方され、家族内や職場で感染が広がっている場合や、受験・仕事などどうしても休めない予定がある時に活用されます。
抗インフルエンザ薬はウイルスの型を問わず作用し、ワクチンと併用することでさらに感染を防ぐ効果が期待できます。
ただし予防内服はあくまで補助的な手段です。手洗いやマスク、うがいなどの日常的な感染対策と合わせて行うことが大切です。
予防接種と予防内服はどう使い分ける?併用で万全の対策を

原則として、インフルエンザの予防に最も大切なことはワクチン接種です。しかし、ワクチンには限界もあります。
ワクチンは何ヶ月も前からその年に流行するウイルスの型を予測して製造されるものであり、しばしば流行予測が外れることもあることから、接種だけでは完全に予防することはできません。
一方予防内服は、感染者との接触後や大切な予定を控えたタイミングで補助的に活用できる方法です。抗インフルエンザ薬はワクチンと異なり長期的な免疫は得られませんが、服用している期間は高い予防効果が期待できます。
そのため、「予防接種を基本とし、必要に応じて予防内服を追加する」という組み合わせが理想的です。実際に治療にも使われる薬を服用することで、感染をかなりの確率で防ぐことができ、ワクチンとの併用によってより確実な予防が可能になります。
インフルエンザ予防内服のメリット

インフルエンザの予防内服には、ワクチン接種だけでは得られない様々なメリットがあります。特に緊急の場合や確実な予防策が求められる場合に効果を発揮します。
予防内服の主なメリットは以下の通りです。
- 受験や重要な仕事、結婚式など、大切な予定を控えた時期に発症リスクを下げられる
- 家族や職場など、濃厚接触が避けられない環境で感染拡大を防げる
- ワクチン接種後、抗体ができるまでの期間を補完できる
それぞれについて詳しく見てみましょう。
大切な時期に発症リスクをさらに下げられる
受験や大事な仕事、結婚式など、どうしても体調を崩したくない予定を控えているとき、予防内服は心強い選択肢になります。
ワクチン接種だけでは不安な場合でも、予防内服を併用することで発症リスクを大きく減らせます。特に絶対に休めない時期には、追加の安心材料として大きな意味があります。
家族や職場で感染者が出たときの感染拡大を防げる
同居している家族や職場などで感染者が出た場合、濃厚接触を避けるのは難しいこともあります。予防内服はそんな場面で周りへの感染を防ぐのに効果的です。
インフルエンザは感染力が強く、また家族内での二次感染率は10-40%と高いため、感染者との接触後早期に予防内服を開始することで感染リスクを大幅に下げることができます。
ワクチンの効果が出るまでの時期にも活用できる
ワクチン接種後、十分な抗体ができるまでにはおよそ2週間かかります。この期間はまだ感染リスクが残るため、予防手段として予防内服を利用できます。
またインフルエンザが流行し始めてからワクチンを打った場合でも、抗体ができるまでの期間をカバーする方法として予防内服は役立ちます。
インフルエンザ予防内服に使われる薬の種類と特徴

予防内服には主にタミフル(オセルタミビル)・イナビル(ラニナミビル)・ゾフルーザ(バロキサビル)の3種類が使われており、それぞれに特徴があります。
薬の名称 | 服用方法 | 使用年齢 | 特徴 |
---|---|---|---|
タミフル(オセルタミビル) | 経口(カプセル/シロップ) | 制限なし | 小児から成人まで幅広く使用可。服用回数が多いが汎用性が高い。 |
イナビル(ラニナミビル) | 吸入 | 制限なし | 1回の吸入で10日間効果が持続。服薬管理が容易。 |
ゾフルーザ(バロキサビル) | 経口 | 制限なし | 1回の服用で10日間効果が持続。新しい作用機序の薬。 |
オセルタミビル、イナビルはどちらも予防効果に大きな差はありませんが、既往歴やアレルギーなどによって処方できるものが変わります。
それぞれの内服薬について詳しくみてみましょう。
タミフル(オセルタミビル)
オセルタミビルは、カプセルまたはドライシロップとして飲むタイプの経口薬です。
予防では1日1回を10日間服用するのが一般的で、子どもから大人まで幅広く使われています。
食事と一緒に服用すると胃への負担が少なく、飲みやすいのも特徴です。小児用のドライシロップもあり、年齢を問わず利用できます。
過去に小児の異常行動との関連が話題になったことがありますが、因果関係ははっきりしておらず、現在でも小児に対してよく処方されている薬です。
なおタミフルは過去に小児の異常行動との関連が話題になったことがありますが、インフルエンザ罹患による高熱そのものが原因で異常行動を生じる場合もあることから、因果関係は証明されておらず、現在でも小児に対してよく処方されている処方薬です。
リレンザ(ザナミビル)
リレンザは、専用の吸入器を使って薬を吸い込むタイプの薬です。
予防では1日1回を10日間吸入する方法が一般的で、5歳以上から使用できます。
薬が直接のどや気道に届くため、ウイルスの増殖を効果的に抑えられます。全身への副作用が少ないのも特徴ですが、正しく吸入する操作が必要になります。
イナビル(ラニナミビル)
イナビルは吸入薬で、1回の吸入で約10日間効果が続くのが大きな特徴です。
服用回数が少ないため、飲み忘れが心配な人にも使いやすい薬です。
ただし、治療時と予防時では用量が異なるため、医師の指示に従って正しく吸入することが重要です。1回の吸入で済むため、服薬管理が難しい方にも向いています。
ゾフルーザ(バロキサビル マルボキシル)
ゾフルーザは2018年に登場した比較的新しい薬でこれまでの薬とは異なり、ウイルスが細胞内で増えるのを防ぐ仕組みで作用します。
1回の服用で約10日間効果が持続するため、服薬管理が簡単なことも大きな特徴です。
家族に免疫不全やご高齢の患者さんがいらっしゃる場合、あるいは、ご家族がインフルエンザにかかってしまった方や、近々大事な仕事や受験など、特殊な事情がある方に処方されます。
インフルエンザ予防内服はどんな人に向いている?

予防内服は、誰にでも必要なものではありません。
しかし以下のような人にとっては心強い選択肢となります。
- 高齢者や基礎疾患のある人(糖尿病・心疾患・呼吸器疾患・腎疾患など)
- 受験や大切な仕事・イベントを控えており、絶対に体調を崩せない人
- 家族や職場で感染者が出て、濃厚接触を避けられない人
- 注射が苦手、副反応が不安でワクチンを避けたい人
まずはご自身の状況と照らし合わせて検討してみましょう。
重症化リスクがある人や受験・仕事を控える人
高齢者や持病のある方、免疫力が下がっている方は、インフルエンザにかかると重症化しやすい傾向があります。
糖尿病・心疾患・呼吸器疾患・腎疾患といった慢性疾患を持つ方や、がん治療中で免疫が抑えられている方は、特に慎重な対策が必要です。
また、受験生や大事なプレゼン、試験を控えている方にとっても、予防内服は体調管理の心強い手段になります。
家族や周囲に感染者がいる場合
同居家族や職場の同僚など濃厚接触を避けられない環境で感染者が出たとき、予防内服は感染の広がりを防ぐのに効果的です。
特に、高齢者施設や医療機関などの集団生活の場では、一人の感染者から急速に感染が広がるリスクがあるため、早めの予防内服が重要となります。
注射が苦手、副反応が心配な人
ワクチン接種を避けたい人にとって、予防内服は代わりの手段として活用できます。
ただしあくまで補助的な方法であるため、可能であればワクチンと併用するのが望ましいとされています。
インフルエンザ予防内服の効果と服用期間

予防内服は、感染者との接触後にできるだけ早く服用を始めることで効果を最大限に発揮します。
理想的には接触後48時間以内、遅くとも72時間以内に開始するのが望ましいとされており、早めに服用することで体内でのウイルスの増殖を効率よく抑えることが可能です。
服用期間や効果の持続時間は薬ごとに異なりますが、前の段落で紹介した通り、タミフルは10日間の連続服用が必要で、イナビルやゾフルーザは1回の使用で10日間ほど効果が続くのが特徴です。
服用期間中は薬の濃度が体内で保たれており、ウイルスが入っても増えにくい状態になります。ただし、自己判断で途中でやめてしまうと予防効果は失われるため、医師の指示どおりに最後まで服用することがポイントです。
インフルエンザ予防内服の副作用と注意点

インフルエンザ予防内服では、まれに軽度の副作用が見られることがあります。ただし、多くの場合は一過性で、適切に服用すれば大きな問題になることはほとんどありません。
以下の表は、代表的な薬剤ごとの副作用と発生頻度をまとめたものです。
薬の名称 | 主な副作用 | 発生頻度の目安 |
---|---|---|
タミフル(オセルタミビル) | 下痢、腹痛、悪心 | 約0.5〜0.9% |
イナビル(ラニナミビル) | 下痢、めまい、腹痛、咳 | 約0.5%前後 |
ゾフルーザ(バロキサビル) | 下痢、悪心、頭痛、嘔吐 | 約1%未満 |
- これらの症状は通常軽度で、食後に服用することで胃腸への負担を軽減できます。
- 吸入薬(イナビル)では、咳や喉の刺激感など局所的な副作用が出ることがあります。
- 重度の副作用は極めてまれで、異常行動などの重大な有害事象との因果関係も現時点では明確ではありません。
服薬中に体調の変化を感じた場合は、自己判断で中止せずに医師へ相談しましょう。また、腎機能に問題がある方や他の薬を服用中の方は、必ず事前に医師に相談して安全性を確認することが大切です。
インフルエンザ予防内服の費用や保険適用

予防目的でのインフルエンザ内服は、原則として自由診療となります。
以下は当院での費用例です(診察代・薬代・送料込、税別)。
薬の名称 | 対象 | 料金(税込別) |
---|---|---|
タミフル(オセルタミビル) | 体重37.5kg以上、10日分 | 7,500円 |
イナビル(ラニナミビル) | 10歳未満:1パック(1吸入) | 7,500円 |
10歳以上:2パック(2吸入) | 9,500円 | |
ゾフルーザ(バロキサビル) | 12歳未満・20〜40kg:1錠 | 8,000円 |
40kg以上:2錠 | 10,500円 | |
12歳以上・80kg未満:2錠 | 10,500円 | |
80kg以上:4錠 | 15,500円 |
薬ごとの費用の目安と特徴
- タミフル(オセルタミビル)
- 体重37.5kg以上の方を対象に、1日1錠を10日間服用します。
- 汎用性が高く、ジェネリック薬を選ぶことで費用を抑えられる点も特徴です。
- イナビル(ラニナミビル)
- 吸入タイプで、10歳未満は1パック、10歳以上は2パックを使用します。
- 1回の吸入で10日間効果が続くため、飲み忘れの心配がない点がメリットです。
- ゾフルーザ(バロキサビル)
- 年齢と体重に応じて服用量が変わり、12歳未満かつ体重20〜40kgの場合は1錠、体重40kg以上では2錠が目安です。
- 12歳以上では、体重80kg未満は2錠、80kg以上は4錠を服用します。1回の服用で効果が持続するため、服薬管理が簡単です。
価格は医療機関ごとに異なる場合があるので、事前にホームページや直接問い合わせして確認しましょう。
インフルエンザ予防内服(予防投与)に保険は適用される?
インフルエンザの予防内服は、基本的には保険適用外です。予防を目的とした場合は自由診療での対応となり、費用は自己負担になります。
ただし治療目的での投与や、医師が必要と判断した一部のケースでは保険適用となる場合があります。例えば、基礎疾患がある方や免疫力が著しく低下している方など、重症化リスクが高いと判断される場合です。
費用面が気になる方は事前に医師に相談し、自分が保険適用の対象になる可能性があるか確認すると良いでしょう。
まとめ|予防接種と予防内服を上手に組み合わせて大切な時期を守ろう

インフルエンザの予防内服は「家族が感染してしまった」「来週に大切な試験がある」「職場で感染者が出た」といった緊急性の高い状況で、あなたの体調や予定を守るための有効な手段です。
ただし、どの薬を選ぶか、いつから飲み始めるか、副作用のリスクはどうかなど、自己判断では迷ってしまう点も多いでしょう。予防内服は医師と相談しながら適切に使うことで、はじめて効果を十分に発揮します。
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