インフルエンザの集団接種・予防接種を見直す|内服薬を活用した新しい対策

インフルエンザ対策といえばワクチン接種が一般的ですが、実はそれだけでは万全とは言えません。
受験や仕事、家族の健康を守るために「絶対にかかりたくない」と思うなら、内服薬による予防も検討する価値があります。
そこで本記事では、集団接種の歴史や課題、ワクチンの重要性とその限界、そして企業や家庭で役立つ内服薬の活用法まで、現代に合ったインフルエンザ対策の選び方をわかりやすく解説します。
インフルエンザ集団接種が始まった経緯

日本では1957年のアジア風邪の流行を契機に、インフルエンザワクチンの接種体制が整えられました。当時は感染が社会全体に与える影響が深刻で、効果的な予防策の必要性が強く意識されたからです。
1962年からは、学校という集団生活の場で感染を抑えるため、小・中・高校生を対象にした集団接種がスタートします。社会への波及を防ぐという狙いもあり、学校で一斉に接種する仕組みが確立しました。
さらに1976年には、予防接種法に基づく臨時の義務接種となり、公費による一斉接種が本格的に導入されます。国を挙げたインフルエンザ対策が色濃く打ち出された時期でした。
インフルエンザ集団接種が中止された理由

しかし、その後も毎年のようにインフルエンザは規模の大小はあるものの流行を繰り返し、まれにワクチンの副反応によると思われる症例が報告されたことから、マスコミを中心に次第にその必要性に疑問の声があげられるようになりました。
特に1979年、学校での接種後に起きた7歳児の痙攣事故をきっかけに、前橋医師会が前橋市と近隣地域で6年に及ぶ接種と非接種の罹患率の疫学調査を実施しました。この結果(前橋データ)では、ワクチンを接種してもインフルエンザにかかる割合が変わらなかったことが判明し、大きな議論を呼びました。
1972年からはエーテル処理によって副反応を低く抑えたワクチンが製造されるようになりましたが、その後、1987年には社会全体の流行を抑えられるほどの根拠が不十分であること、副作用への懸念が残ることから、保護者の同意を重視する任意接種へ移行。
1994年には予防接種法の改正により、インフルエンザは対象疾患から除外され、30年以上続いた一斉接種は終わりを迎えました。
出典:東京都感染症情報センター『インフルエンザワクチン接種の変遷』
出典:衆議院『インフルエンザ予防接種の問題に関する質問主意書』
予防接種はインフルエンザ対策の基本

現在でもインフルエンザワクチンの有効性は科学的に証明されており、予防接種は基本的な対策として重要な位置を占めています。
インフルエンザワクチンの有効性は、流行株とワクチン製造株の抗原性の一致度によって異なりますが、米国疾病対策予防センター(CDC)が公表している2009年から2023年までの有効性の推定値では、2023-24期の有効性は42%と推定されています。また、欧州疾病予防管理センター(ECDC)の研究においても、2023-24期の有効性はプライマリケアで51%、病院で38%と報告されています。
国内の研究データも重要な効果を示しています。65歳以上の高齢者福祉施設に入所している高齢者については34~55%の発病を阻止し、82%の死亡を阻止する効果があったとされています。また、6歳未満の小児を対象とした2015/16シーズンの研究では、発病防止に対するインフルエンザワクチンの有効率は60%と報告されました。
ワクチンの最大の効果は重症化を予防することです。インフルエンザワクチンを接種すればインフルエンザに絶対にかからない、というものではありませんが、発病後の重症化や死亡を予防することに関しては、一定の効果があるとされています。
予防接種のメリット
予防接種には個人レベルと集団レベルの両方でメリットがあります。
個人レベルでは、ワクチン接種により発症リスクを下げることができ、万が一感染した場合でも重症化や入院のリスクを大幅に減少させることができます。特に高齢者や基礎疾患を持つ方にとって、この重症化予防効果は非常に重要です。
集団レベルでは、接種率が向上することで集団免疫の効果が期待できます。企業や学校でまとめて受けられる利便性もあり、職場や学校単位での感染拡大を抑制する効果が見込まれます。
このようにメリットは大きい一方で、接種しない人が一定数いるのも現実です。
インフルエンザ予防接種をためらう理由と背景

日本感染症学会によると、2023/24シーズンのインフルエンザ累積推計受診者数は約1801.9万人にのぼりました。その一方、供給されたワクチン3135万本に対し、実際に使用されたのは2432万本にとどまり、接種率が伸び悩んでいることが分かります。
出典:日本感染症学会『2024/25 シーズンにおけるインフルエンザの現況と今後の見通しに関する提言 (一般の方向け)』
予防接種をためらう理由としては、以下のような声が見られます。
- 医療機関に行く時間が取れない
- これまでインフルエンザにかかったことがない
- かかっても軽症で済んだため必要性を感じない
- 副反応が心配である
- 接種したのに感染した経験があり、効果に疑問を感じている
こうした理由により、全ての人がワクチンを接種するとは限らないのが現状です。接種に対する心理的・時間的ハードルが存在することを踏まえ、代わりとなる手段を知っておくことが大切です。
副反応リスクがある人への注意と対応
よく見られる副反応と頻度
インフルエンザワクチンには、以下のような副反応が報告されています。
副反応の種類 | 主な症状 | 発生頻度 | 通常の経過 |
---|---|---|---|
局所反応 | 発赤(赤み)、腫脹(腫れ)、疼痛(痛み) | 約10〜20% | 通常2〜3日で軽快 |
全身反応 | 発熱、頭痛、悪寒、倦怠感 | 約5〜10% | 通常2〜3日で軽快 |
重篤な反応 | ショック、アナフィラキシー様症状(発疹、呼吸困難など) | 非常にまれ | 医師の診察が必要 |
副反応は大多数が軽度で短期間におさまりますが、体質によっては強く反応が出るケースもあるため注意しましょう。
接種に注意が必要な方の例
以下に該当する方は、接種前に医師と相談することが推奨されます:
- 過去にワクチン接種でアレルギー症状が出たことがある方
- 鶏卵・鶏肉由来の成分にアレルギーがある方
- 基礎疾患を持っている方(喘息、免疫疾患など)
また副反応のリスクが高いことに加え、体調管理への不安がある方の中には、予防接種を控えられるケースもあります。
このような事情を持つ方は、ワクチン以外の方法でインフルエンザを予防する選択肢を知っておくことが重要です。最近では、抗インフルエンザ薬の「予防内服」が注目されており、より柔軟な感染対策が可能となっています。
内服薬でのインフルエンザ予防という新しい選択肢

ワクチンだけでは不安な人への補完策として、抗インフルエンザ薬の予防内服という方法があります。
インフルエンザ薬の予防内服とは、インフルエンザに感染する可能性が強い場合に、インフルエンザの治療薬を予防目的で使用することです。例えば、受験や重要な業務など、ご自身やご家族にどうしても休めない用事がある時、また、ご家族や会社の同僚など周囲の方がインフルエンザに感染し、濃厚接触が疑われた場合、抗インフルエンザ薬を服用することで、インフルエンザの感染を予防することができます。
原則として、インフルエンザの予防に最も大切なことはワクチン接種です。しかしワクチンは、何ヶ月も前から、その年に流行するウイルスの型を予測して製造されるものであり、しばしば流行予測が外れることもあることから、ワクチンだけでは完全に予防することはできません。
抗インフルエンザ薬はインフルエンザウイルスの型に関わらず、ウイルスの増殖そのものを抑制することができますし、ワクチンと併用することも可能で、より高い確率で感染を防ぐことができます。
受験生や子ども、高齢の家族を守るために
受験を控えた子どもやお孫さん、体力の低下した高齢の両親や祖父母など、重症化リスクが高い家族を守るための予防策として、内服薬を選ぶ価値があります。
受験シーズンは特に、一度の体調不良が人生を左右する可能性もあります。長年の努力が実を結ぶ大切な時期に、インフルエンザで力を発揮できないということは避けたいものです。また、高齢者の場合、インフルエンザが重篤な合併症を引き起こすリスクも高く、家族としては万全の対策を講じたいと考えるのは自然なことです。
このような場合、予防接種に加えて内服薬による予防を検討することで、より確実な感染予防が期待できます。
いざという時の備えになる内服薬の活用法
旅行や大切な予定の前に備えておくことで、安心して過ごせます。家族旅行や結婚式、卒業式などの重要なイベントを控えている時期に、インフルエンザにかかってしまうリスクを考えると、事前の対策は非常に有効です。
忙しい時期や突発的な感染リスクにも柔軟に対応できます。職場でインフルエンザが流行し始めた時や、お子さんの学校で学級閉鎖が相次いでいる時など、急に感染リスクが高まった状況でも、すぐに予防対策を開始できるのは大きなメリットです。
インフルエンザの予防内服について、どのような薬の種類があるかや費用、予防内服が向いている人の特徴など詳細は以下の記事で解説しています。

企業のインフルエンザ対策は集団接種と内服薬が理想的

企業においても全ての社員が予防接種を受けるという状況を実現するのは現実的に困難です。時間的な制約、副反応への懸念、効果への疑問など、様々な理由により接種しない社員が一定の割合で存在します。
このような状況下で、接種していない社員の感染予防をどう図るかは重要な課題です。インフルエンザが職場で流行すれば、業務に大きな支障をきたし、顧客サービスにも影響を与える可能性があります。
残りの社員を守るための手段として、予防内服薬の活用が注目されています。特に、感染すれば業務に重大な影響を与える部署や、顧客対応の最前線にいる社員に対しては、追加の予防策として有効です。
福利厚生として導入するメリットとコスト感も魅力的です。予防内服薬の費用は社員1人あたり3000円程度と、予防接種とほぼ同等の費用負担で済みます。社員の健康を守り、業務継続性を確保するための投資として、十分に費用対効果が見込める施策といえるでしょう。
まとめ|予防接種と内服薬でインフルエンザ対策を万全にしましょう

インフルエンザ対策は予防接種と内服薬を上手に組み合わせることで、より確実に感染リスクを減らせます。受験生や高齢の家族がいるご家庭では、内服薬を活用した準備が心強い支えになります。
企業でも、予防接種だけでは守りきれない社員への対策として、福利厚生に内服薬を取り入れる動きが広がっています。
個人の方はぜひ以下のLINEからご相談を、企業の方はお問い合わせボタンからお気軽にご相談ください。
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