【健康講話 2026年2月】健診結果を活かす読み方その1 ― 受診の判断と、将来の健康管理に役立てるために

健康診断の結果が届くと、まず判定区分に目が向き、詳しい数値までは十分に確認しないままになっていませんか。
健診の数値は、現在の体の状態を客観的に示す重要な情報であり、将来の健康管理を考える上での大切な手がかりでもあります。
近年の疫学研究では、血圧、血糖、脂質などの軽度の変化が、将来の心血管疾患リスクと関連することが示されています。「まだ病気とはいえない段階」での数値の変化を、どのように受け止め、管理していくかが、長期的な健康の観点では重要とされています。
同じ数値でも、対応が異なる理由
健診結果について、人によって「経過観察」「再検査」「受診勧奨」と対応が異なることがあります。
これは、医師や産業医が、単一の数値だけで判断しているのではなく、
- 年齢
- 体重や腹囲
- 血圧、脂質、血糖など他項目との関係
- 過去からの推移
- 生活習慣や就業状況
- その他 喫煙歴や家族の病歴
などを総合的に考慮して、健康リスクを評価しているためです。
現在では、複数の健診データを組み合わせて、将来の心血管疾患リスクを総合的に評価することが標準とされています。同じ数値でも、背景によって必要な対応が異なるのは、この総合評価に基づいて判断されているためです。
「要再検」と「要精密検査」の考え方
健診結果では、「要再検」と「要精密検査」という区分が記載されることがあります。
この2つは、似ているようで、意味合いが少し異なります。
- 要再検:
一時的な変動や、測定条件・体調の影響などの可能性も考えられるため、もう一度確認することが目的です。再検査によって、問題がないことが確認できるケースも少なくありません。 - 要精密検査:
現時点で、何らかの病気の可能性を否定できず、追加検査による詳しい評価が必要と判断された状態です。原因や状態を明らかにするために、医療機関での受診が勧められます。
いずれの場合も早めに確認しておくことで、
- 不要な心配を減らす
- 必要な対応を適切な時期に行う
- 今後の健康管理の方針を明確にする
といった点につながります。
BMI(体格指数):体重よりも「体格バランス」を見る
参考基準値(日本人間ドック学会など)
- BMI:18.5 以上 25.0 未満
(BMI=体重kg ÷ 身長m²)
BMIは、体重そのものではなく、身長に対する体重のバランスを見る指標です。
年齢とともに筋肉量が減少し、体脂肪の割合が増えることで、体重が大きく変わらなくても、BMIや体格バランスが変化することがあります。
近年の研究では、BMIが高めの状態が続くことで、
- 高血圧
- 脂質異常
- 糖代謝異常
- 脂肪肝
といった項目に連鎖的に影響することが示されています。
一方で、BMIが18.5未満の「やせ」に該当する場合にも、
- 貧血
- 骨密度低下
- 月経異常
- 体力低下
などとの関連が指摘されています。
BMIは単独で善し悪しを決める指標ではなく、腹囲や血液データとあわせて、体格バランスを総合的に評価するための目安として、活用することが重要です。
血圧:境界域の評価が大切な理由
参考基準値(日本人間ドック学会など)
- 収縮期血圧:130 mmHg 未満 (健診上の目安)
- 拡張期血圧:85 mmHg 未満 (健診上の目安)
※医療機関での高血圧の診断基準とは異なる場合があり、家庭血圧や診察室血圧では、より低い基準が用いられることがあります。
健診で多く見られるのが、
- 収縮期血圧 130〜139 mmHg
- 拡張期血圧 85〜89 mmHg
といった、境界域に相当する範囲です。
この範囲では、日常生活で症状を自覚することは少ない一方、疫学研究では、心血管疾患リスクが段階的に上昇することが示されています。
この段階で、
- 生活習慣の見直し
- 血圧の経過確認
- 必要に応じた医療機関での評価
を行うことは、将来の健康管理の観点から、合理的な対応と考えられています。
脂質:コレステロールと中性脂肪の見方
脂質項目では、LDLコレステロールだけでなく、中性脂肪(TG)やHDLコレステロールも重要な指標です。
参考基準値(日本人間ドック学会など)
- LDLコレステロール:120 mg/dL 未満
- HDLコレステロール:40 mg/dL 以上
- 中性脂肪(TG):150 mg/dL 未満(空腹時)
実際の評価では、
- LDLコレステロール
- HDLコレステロール
- 中性脂肪
- 血圧
- 血糖
- 喫煙歴
- 年齢・家族歴
などを総合して、心血管疾患のリスクを評価します。
近年のガイドラインでは、LDL値単独ではなく、全体のリスク評価に基づく管理が標準的な考え方とされています。
健診で脂質異常を指摘された場合には、必要に応じて医療機関で評価を受け、現在のリスクの位置づけを確認しておくことが、今後の健康管理に役立ちます。
血糖・HbA1c:糖代謝の状態を知る
参考基準値(日本人間ドック学会など)
- 空腹時血糖:70〜99 mg/dL
- HbA1c(NGSP):5.5% 未満 (施設基準)
※一般的な糖尿病診断基準では、5.6%以下が正常、5.7〜6.4%が糖尿病予備群、6.5%以上が糖尿病型とされます。
以下の範囲は、糖代謝異常のリスクが高まる領域とされます。
- 空腹時血糖:100〜125 mg/dL
- HbA1c:5.7〜6.4%
この段階では、生活習慣の見直しや経過観察が推奨され、適切な対応により、良好な状態を維持できるケースも少なくありません。
健診でこれらの数値が見られた場合には、一度医療機関で評価を受け、今後の管理方針について相談しておくことが、長期的な健康管理の観点から有益です。
肝機能:脂肪肝と生活習慣
参考基準値(日本人間ドック学会など)
- AST(GOT):30 U/L 以下
- ALT(GPT):30 U/L 以下
- γ-GTP:男性 50 U/L 以下、女性 30 U/L 以下(目安)
飲酒量が多くないにもかかわらず、肝機能異常を指摘されるケースが増えており、その背景として、代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD:旧称 NAFLD)が注目されています。
また、γ-GTPは飲酒だけでなく、肥満、脂肪肝、薬剤の影響でも上昇することがあり、必ずしも「お酒だけ」が原因とは限りません。
脂肪肝は、肝臓の問題にとどまらず、
- 糖代謝
- 脂質代謝
- 心血管疾患
との関連も指摘されています。
健診で肝機能異常を指摘された場合には、肝臓単独ではなく、生活習慣病全体の視点から評価を行うことが、今後の健康管理において重要です。
健診結果は「将来の健康管理のための情報」
健康診断は、現在の体調を評価するためだけのものではなく、将来の健康リスクを見据えた、重要な情報源でもあります。
異常を指摘された場合でも、多くは早期の段階であり、生活習慣の調整や、必要に応じた医療機関での評価により、良好な状態を維持できるケースも少なくありません。
健診結果は、「問題点」として受け止めるものではなく、今後の健康管理を考えるための材料として、活用していくことが大切です。
数値の意味を理解し、必要なときに適切に確認することが、将来の体と仕事のパフォーマンスを守ることにつながります。
まとめ
今回は、BMI、血圧、脂質、血糖、肝機能といった主要項目について、参考基準値とともに、健診結果の考え方を整理しました。
健診結果は、個別の数値ではなく、全体のバランスとして読み取ることが大切です。「異常なし」と判定された項目の中にも、基準値内での位置づけや、経年変化、他項目との組み合わせなど、将来の生活習慣病リスクを考えるうえで重要な情報が含まれています。
次回【第2回】では、腎機能、尿検査、貧血、心電図、胸部X線など、普段はあまり意識されにくい項目を取り上げ、健診結果の見方をさらに深めていきます。


