リワーク(復職支援)を受けるメリットやデメリットについて解説

メンタルヘルス不調による休職後の職場復帰を考えている方にとって、リワークプログラムの利用は重要な選択肢の一つです。しかし、「本当に効果があるのか」「デメリットはないのか」といった不安や疑問を抱える方も多いでしょう。
そこでこの記事では、リワークプログラムのメリットとデメリットを詳しく解説し、あなたの復職に向けた判断をサポートします。
リワークとは?休職者の職場復帰を支援するプログラムの全容

リワークプログラムとは、メンタルヘルス不調により休職している方の職場復帰を医療的にサポートする専門的なリハビリテーションプログラムです。医療機関や地域障害者職業センターなどで実施され、主治医や産業医と連携しながら、段階的な復職支援を行います。
対象者は主にうつ病や適応障害などの精神疾患で休職している方で、ある程度症状が安定し、通所可能な状態にある人が中心です。リワークでは、生活リズムの改善から始まり、認知行動療法やSSTなどの専門的なプログラムを通じて、職場復帰に必要なスキルを段階的に身につけていきます。
医療機関でのリワークと就労支援施設では、提供されるプログラムの内容や費用面で違いがあります。医療機関の場合は健康保険が適用され、より専門的な医療的支援が受けられる一方、就労支援施設では職業訓練的な要素が強く、利用料が無料または低額で済むことが特徴です。
リワークプログラムを利用する5つのメリット

それではリワークプログラムを利用するメリットにはどのようなものがあるのでしょうか?
主なメリットとしては以下が挙げられます。
- 医師とリワーク専門スタッフによる専門的な支援体制
- 職場復帰に向けた生活リズムの改善と体調管理
- うつ病再発予防のための実践的なスキルトレーニング
- グループワークを通じた対人関係スキルの向上
- 段階的なプログラムによるスムーズな職
段階的なプログラムによるスムーズな職場復帰
リワークプログラムでは、個々の回復状況に合わせて段階的に負荷を調整しながら、職場復帰に向けた準備を進めていきます。実際の業務を想定した課題やプロジェクト作業を通じて、集中力や持久力、業務遂行能力を徐々に向上させることができます。
また、時間管理やスケジュール管理など、実践的なビジネススキルの再習得も可能です。段階的なアプローチにより、急激な環境変化によるストレスを最小限に抑えながら、自信を持って職場復帰に臨むことができます。
定期的な評価面談を通じて進捗状況を確認し、必要に応じてプログラムの調整も行われるため、着実な回復と復職の実現が期待できます。
医師とリワーク専門スタッフによる専門的な支援体制
リワークプログラムの最大の特徴は、精神科医や臨床心理士、作業療法士などの専門家チームによる包括的なサポートを受けられることです。定期的な診察やカウンセリングを通じて、心身の状態を詳しく評価し、個々の状況に合わせた適切なアドバイスを提供します。
また、服薬管理や体調の変化への対応など、医学的な観点からの支援も充実しています。復職に向けた準備状況の評価や、職場との連携における専門的なアドバイスなど、経験豊富な専門家による多角的なサポートを受けることができます。
職場復帰に向けた生活リズムの改善と体調管理
休職中は生活リズムが乱れがちですが、リワークプログラムでは決まった時間に通所し、規則正しいスケジュールでプログラムに参加することで、自然と職場復帰に適した生活パターンを取り戻すことができます。朝の体調チェックや疲労度の記録など、日々の体調管理の方法も学べます。
また、睡眠や食事、運動など、健康的な生活習慣の確立に向けたアドバイスも提供され、自己管理能力の向上にもつながります。休憩の取り方や疲労回復の工夫など、実践的なセルフケアスキルも身につけることができます。
うつ病再発予防のための実践的なスキルトレーニング
職場復帰後の再発を防ぐため、認知行動療法をベースとした実践的なスキルトレーニングが提供されます。ストレス状況での考え方の癖や行動パターンを理解し、より健康的な対処法を学ぶことができます。
また、自身の性格傾向や価値観を見つめ直す機会も設けられ、無理のない働き方を実現するためのヒントを得ることができます。アサーションスキルや問題解決技法など、職場で活用できる具体的なコミュニケーションスキルも習得できます。これらのスキルは、職場復帰後の安定した就労継続に大きく貢献します。
グループワークを通じた対人関係スキルの向上
リワークプログラムでは、グループワークや共同作業など、他の参加者との交流機会が多く設けられています。休職中に低下しがちな対人コミュニケーション能力を、安全な環境で段階的に向上させることができます。同じような経験を持つ仲間との交流は、孤独感の軽減や自己肯定感の回復にもつながります。
また多様な価値観や考え方に触れることで、柔軟な対人関係スキルを養うことができます。これらの経験は、職場での人間関係に対する不安の軽減と、円滑なコミュニケーションの実現に役立ちます。
リワークのデメリットと注意点

では反対にデメリットはどのようなものがあるのか、ここでは以下のデメリットと注意点について説明します。
- 経済的な負担と収入の減少
- 通所による身体的・精神的な負荷
- 長期間の時間的拘束
- 日常生活との両立における課題
- 集団プログラムでの対人関係ストレス
集団プログラムでの対人関係ストレス
リワークプログラムは基本的に集団形式で行われるため、他の参加者との関係構築や集団活動への適応が求められます。しかし、休職によって低下した対人スキルの回復途中であることや、新しい環境での人間関係構築に不安を感じる方も多くいます。
また、参加者それぞれの性格や回復段階が異なるため、グループワークでの協調や意思疎通に困難を感じることもあります。さらに、他者との比較による焦りや劣等感を感じやすい環境でもあるため、メンタル面での配慮が必要です。特に社交不安が強い方の場合、この側面での負担が大きくなる可能性があります。
経済的な負担と収入の減少
リワークプログラムの利用には、経済面での慎重な検討が必要です。医療機関でのプログラムは健康保険が適用されますが、医療費の自己負担分(3割)が毎月発生します。さらに、リワーク利用中の主な収入源は傷病手当金となるため、通常の給与と比べて収入が大幅に減少します。
傷病手当金は標準報酬日額の3分の2程度であり、生活費や住宅ローンなどの固定費支払いに影響が出る可能性もあります。また、プログラム参加に伴う交通費や食費なども考慮が必要です。長期の利用となる場合は、事前に十分な資金計画を立てることが重要です。
通所による身体的・精神的な負荷
毎日の通所は、回復途中の心身に大きな負担をかけることがあります。特に、通勤時間が長い場合や公共交通機関の混雑時間帯を避けられない場合は、体力的な消耗が著しくなります。また、天候不良時や体調がすぐれない日でも、定期的な通所が求められるため、体調管理の難しさを感じる方も少なくありません。
さらに、プログラムへの参加自体がストレスとなることもあり、慣れるまでは精神的な疲労を強く感じる場合があります。このため、特にプログラム開始初期は、体調の変化に十分な注意を払う必要があります。
長期間の時間的拘束
リワークプログラムは通常3ヶ月から6ヶ月程度の期間を要し、場合によってはさらに長期化することもあります。プログラムは平日の日中をほぼ全て占めるため、その間の時間的な自由度は極めて限られます。また、プログラムの進行状況や体調の変化によって、当初の予定よりも期間が延長されることもあります。
このため、復職時期の見通しが立てにくく、職場との調整や今後の計画を立てる際に不確実性が生じることがあります。リワーク期間中は、十分な休息時間の確保と効率的な時間管理が求められます。
日常生活との両立における課題
平日の大半をプログラムに費やすため、家事や育児、介護などの家庭責任との両立が大きな課題となることがあります。特に、家族の支援が得られにくい環境では、日常生活の維持に困難を感じる場合があります。また、通院や他の治療との両立、個人的な用事の処理なども、限られた時間の中でやりくりする必要があります。
生活リズムの変更や役割分担の見直しなど、家族全体での調整と協力が不可欠となります。これらの生活面での変更は、新たなストレス要因となる可能性もあります。
リワークプログラムの内容と流れ

標準的なリワークプログラムは、午前9時から午後4時頃までの時間帯で実施されます。1日のスケジュールは、朝のバイタルチェックや体調確認から始まり、午前中は主に個人作業や軽度な課題に取り組みます。午後からはグループワークや認知行動療法、SSTなどの専門的なプログラムが組まれています。
プログラムは段階的に構成されており、初期は生活リズムの改善と基礎体力の回復に重点を置きます。中期では実務能力の向上を目指し、PCワークや事務作業などの課題に取り組みます。後期になると、より実践的な内容となり、模擬的な会議や発表など、実際の職場を想定した訓練が増えていきます。
認知行動療法では、ストレス対処法や考え方の偏りの修正を学び、SSTではビジネスコミュニケーションの基本を練習します。また、定期的な個別面談を通じて、進捗状況の確認や目標の見直しを行います。これらのプログラムを通じて、職場復帰に必要なスキルと自信を段階的に身につけていくことができます。
リワークにかかる費用と利用可能な支援制度

医療機関でのリワーク費用は、健康保険が適用される場合、3割負担で月額2〜4万円程度が一般的です。ただし、自立支援医療制度を利用することで、さらに費用を抑えることが可能です。医療機関によって料金体系は異なり、デイケアプログラムとして実施される場合は1日当たりの料金設定となることもあります。
自立支援医療制度は、精神疾患の治療にかかる医療費の自己負担を軽減する制度です。世帯の所得に応じて自己負担上限額が設定され、市町村民税非課税世帯の場合は月額上限が0円となります。申請は居住地の市区町村で行い、主治医の診断書が必要です。
また、休職中の収入保障として、健康保険の被保険者であれば傷病手当金を受給できます。標準報酬日額の3分の2相当額が最長1年6ヶ月支給されます。リワーク利用中も継続して受給可能で、生活の経済的基盤となります。
公務員や一部の企業では、独自の休職制度や復職支援制度により、リワーク利用時の費用補助や給与保障が手厚く設定されているケースもあります。人事部門や産業医に相談し、利用可能な制度を確認することをお勧めします。
まとめ:リワークの活用で成功する職場復帰のポイント

リワークプログラムは、専門家のサポートを受けながら段階的に職場復帰を目指せる効果的な支援制度です。メリットとデメリットを十分に理解し、自分の状況に合わせて活用することが重要です。費用面では、自立支援医療制度や傷病手当金など、様々な支援制度を組み合わせることで、経済的な負担を軽減できます。
不安や迷いがある場合は、まずは専門医に相談することをお勧めします。当院では、リワーク経験が豊富な専門医が、あなたの状況に合わせた最適なプログラムをご提案いたします。また、各種支援制度の活用方法についても、詳しくご説明させていただきますので、お気軽にご相談ください。