傷病手当金の申請がスマホで完結!協会けんぽ「電子申請」で会社も社員もラクに――心療内科・精神科・リワークの現場から

「休職中の傷病手当金、申請書を書いて、会社に回して、病院で書いてもらって、郵送して…」。体調がすぐれないなかで、こうした手続きを負担に感じた方は少なくないと思います。
2026年1月13日から、全国健康保険協会(協会けんぽ)で「電子申請サービス」が始まりました。傷病手当金や高額療養費などの申請が、スマートフォンやパソコンからできるようになっています。
惟心会では、心療内科・精神科のクリニックとリワーク(復職支援)プログラムを運営しています。うつ病や適応障害などで休職される方を日々診療しており、傷病手当金の書類をお書きする機会は非常に多くあります。この記事では、そうした現場での経験も交えながら、協会けんぽに加入している会社(人事・総務のご担当者)と社員の方(当院の患者さん)の両方の立場から、電子申請のメリットと業務効率化のポイントをご紹介します。あわせて、療養中の通院で大切にしていただきたいことと、当院での証明書のお渡し方法についてもご案内します。
協会けんぽの「電子申請サービス」とは
電子申請サービスは、これまで紙で郵送していた健康保険の申請を、インターネットで提出できるしくみです。協会けんぽのホームページ、または「けんぽアプリ」から利用できます。
主な対象の申請
- 傷病手当金(病気やけがで仕事を休み、給与が受けられないときの手当)
- 出産手当金・出産育児一時金
- 高額療養費・限度額適用認定
- 療養費(治療用装具、弾性着衣、小児の治療用眼鏡など)
利用に必要なもの
- マイナンバーカード(カード本体) ※スマートフォンに搭載したマイナンバーカードは使えません
- スマートフォンまたはパソコン
- 添付書類の画像(医療機関の証明、会社の証明など)
受付は平日8:00〜21:00です。土日祝日と年末年始(12月29日〜1月3日)は利用できません。17時15分以降に送信した申請は、翌営業日の受付になります。マイナンバーカードをお持ちでない方は、これまでどおり紙の申請書を郵送します。
証明書の様式は、これまでと同じ
「電子申請になると、病院に書いてもらう書類も変わるの?」というご質問をいただくことがあります。電子申請専用の新しい様式はなく、医師が記入する「療養担当者記入用」も、会社が記入する「事業主記入用」も、これまでと同じ協会けんぽの様式を使います。記入された用紙をスマートフォンで撮影し、画像としてアップロードするしくみです。原本を郵送する必要はありませんが、再提出を求められることがあるため、原本は捨てずに保管してください。

社員(患者さん)にとってのメリット
1. 郵送の手間と日数がかからない
これまでは申請書をコピーし、封筒に入れ、切手を貼って投函する必要がありました。届くまでに数日かかり、届いたかどうかもわかりませんでした。電子申請では、書類をスマートフォンで撮影してアップロードするだけです。送信したその場で手続きが終わります。
心療内科・精神科で療養されている方のなかには、「外に出てポストに行くこと自体がつらい」「封筒の宛先を調べて書くだけで疲れてしまう」という方もいらっしゃいます。調子の良いタイミングで、ご自宅から短時間で手続きができることは、療養中の方にとって大きな助けになります。
2. 入力ミスをその場で直せる
紙の申請では、記入漏れがあると書類が送り返されてきます。気づくまでに時間がかかり、振込みも遅れてしまいます。電子申請では、入力の時点でシステムがチェックしてくれるため、ミスに気づきやすくなります。万が一書類に不備があった場合も、オンラインで修正して出し直せます。
3. 審査の進み具合がアプリでわかる
「申請書は届いたのか」「いつ振り込まれるのか」。休職中は収入面の不安が強くなりやすく、こうした心配が気持ちの負担になることもあります。電子申請では、審査の状況をアプリやホームページでいつでも確認できます。協会けんぽによると、審査の結果支払いが可能であれば、受付日から10営業日以内に支払われます。
4. 長くお休みする方ほど効果が大きい
メンタルヘルスの不調による休職は、数か月から半年以上に及ぶことも珍しくありません。傷病手当金は、1か月ごとなど複数回に分けて申請するのが一般的です。毎回の郵送がなくなることで、長期の療養になるほど負担軽減の効果が大きくなります。

会社(人事・総務)にとってのメリット
1. 申請書の回収・取りまとめ・郵送がなくなる
これまでは、社員から申請書を預かって事業主の証明欄を記入し、まとめて郵送している会社もあったと思います。電子申請では、社員ご本人が直接申請します。会社は証明欄を記入して社員に返すだけで済み、郵送や発送の管理が不要になります。
2. 休職中の社員とのやり取りを最小限にできる
メンタルヘルス不調で休職している社員にとって、会社からの連絡は、内容にかかわらず緊張や負担につながることがあります。書類の受け渡しや進み具合の確認で何度も連絡を取り合う必要が減ることは、会社側の事務負担が減るだけでなく、社員が療養に専念しやすい環境づくりにもつながります。
3. 「あの申請どうなりましたか?」という問い合わせが減る
社員は審査状況を自分で確認できるため、人事・総務の担当者への進み具合の問い合わせが減ることが期待できます。
4. 書類の不備による差し戻しが減る
入力チェックによって記入漏れが減るため、不備で書類が戻ってきたときの再記入や再証明のやり取りも少なくなります。
会社として知っておきたい注意点
- 傷病手当金では、これまでどおり事業主の証明が必要です(退職後の期間の申請を除く)。証明欄を記入した用紙を、社員に渡してください。
- 事業主が社員に代わって電子申請することはできません。社員ご本人か、社会保険労務士が申請します。
- マイナンバーカードを持っていない社員は、これまでどおり紙で申請します。
社内でご案内する際は、「平日のみ受付」「マイナンバーカード本体が必要」「証明書の原本は保管しておく」の3点をお伝えいただくと、スムーズに手続きができます。

心療内科・精神科とリワークの現場から――療養中の「通院」が大切な理由
ここからは、当院で多くの休職中の患者さんを診療してきた経験から、ぜひ知っておいていただきたいことをお伝えします。
傷病手当金は「治療に専念するため」の制度です
傷病手当金は、病気やけがで働けない期間の生活を支え、安心して治療に専念し、職場に戻るための制度です。協会けんぽの申請書でも、医師が記入する欄には、労務に服することができないと認めた期間に加えて、診療を行った日数や、症状の経過・治療内容などを書く欄が設けられています。
つまり、企業や健康保険の側から見ると、「休職中にきちんと通院しているか」「職場復帰に向けて、薬物療法を含むしっかりした治療を受けているか」が確認される書類だということです。
通院間隔が長いと、確認や問い合わせが入ることも
休職中は、少なくとも隔週程度の通院頻度を保ちましょう。
医師は、実際に診察してお体や心の状態を確認したうえで、「この期間は働くことが難しい状態だった」と証明します。受診の間隔が大きく空いてしまうと、その間の状態を医学的に判断する根拠が乏しくなり、証明できる内容にも限りが出てきます。
また、当院の経験では、通院間隔が長すぎるケースなどで、協会けんぽや健保組合からクリニックに対して治療内容に関する問い合わせが入ることもあります。審査に時間がかかったり、確認が必要になったりする可能性がありますので、十分にご注意ください。
定期的な通院は、復職への近道でもあります
うつ病や適応障害などの治療では、症状や生活リズムの変化を定期的に確認し、お薬の量や種類を調整していくことがとても大切です。通院が途切れると、回復の度合いが見えにくくなり、結果として復職のタイミングを判断しにくくなってしまいます。
主治医の指示に沿って定期的に受診し、必要な薬物療法や療養指導を受けていただくことは、傷病手当金を適切に受け取るためだけでなく、ご自身の回復と、安定した職場復帰のための一番の近道です。

リワークプログラムという選択肢
惟心会では、復職を目指す方のためのリワークプログラムも運営しています。決まった時間に通所して生活リズムを整えたり、集団でのプログラムを通じて体力や集中力、対人関係のコツを取り戻したりしながら、段階的に職場復帰の準備を進めていきます。
リワークの現場で感じるのは、「療養期間をどう過ごしたか」が、復職後に安定して働き続けられるかどうかに大きく影響するということです。休職期間は「ただ休むだけ」の時間ではなく、回復と再発予防の準備をする大切な時間です。会社のご担当者にとっても、社員が定期的に通院し、必要に応じてリワークなどの支援を利用しているかどうかは、復職の判断をするうえで重要な情報になります。

当院での証明書のお渡しについて
傷病手当金の「療養担当者記入用」など、医師の証明が必要な書類は、電子申請でもこれまでと同じ協会けんぽの様式を使います。当院では、証明書を読みやすく正確にお作りするため、文字を印字して作成する準備を進めています。手書きに比べて写真でもはっきり読み取れるため、審査での確認がスムーズになります。
なお、傷病手当金の証明は、対象となる期間が過ぎてから、その期間の診療内容をもとに作成します。先の期間についてあらかじめ証明することはできませんので、ご了承ください。
お渡し方法は「郵送」または「次回ご来院時の手渡し」
作成した証明書は、ご自宅への郵送、または次回ご来院時に窓口でお渡ししています。
LINEやメールなどでのデータ送付は行っておりません。診療に関わる大切な個人情報を安全にお届けするためですので、ご理解をお願いいたします。定期的に通院されている方は、次回の受診日にお受け取りいただくのがもっともスムーズです。お受け取りになった用紙を、そのままスマートフォンで撮影してご利用ください。

撮影とアップロードのコツ
- 用紙の四隅にある印がすべて写るように撮影してください。
- 明るい場所で、影や反射が入らないように撮影してください。
- iPhoneで写真がアップロードできない場合は、カメラの設定で「互換性優先」を選んでください。
- マイナンバー(12桁の番号)が写った画像はアップロードしないでください。
- 証明書の原本は捨てずに保管してください。協会けんぽから再提出を求められることがあります。
休職中の傷病手当金申請、おすすめの流れ
当院に通院中の方が電子申請を利用する場合、次のような流れで進めていただくとスムーズです。
- 対象期間が終わったら、会社に事業主の証明を依頼する
給与の支払い状況や出勤状況を会社に記入してもらい、用紙を受け取ります。 - 受診時に、当院へ証明書の作成を依頼する
定期受診の際に受付へお申し出ください。対象期間を事前に確認しておくと、記入がスムーズです。 - 次回の受診時に受け取る(または郵送で受け取る)
通院の流れのなかで受け取れるため、余分な外出やご連絡は必要ありません。 - 平日の日中に、スマートフォンで撮影して申請する
体調の良いタイミングで、落ち着いて入力してください。入力途中のデータは保存できます。 - アプリで審査状況を確認する
受付番号は控えておきましょう。
毎月申請する場合は、「月末に会社へ依頼、翌月の受診時に当院へ依頼」のように、ご自身の通院スケジュールに合わせてリズムを決めておくと、申請のし忘れや遅れを防げます。

会社のご担当者へ――休職から復職までの連携のポイント
メンタルヘルス不調による休職では、会社・本人・主治医の連携が、円滑な復職と再発予防のカギになります。当院の経験から、次の点を意識していただけると助かります。
- 連絡の窓口と頻度をあらかじめ決めておく
傷病手当金の書類のやり取りが減る分、定期的な状況確認の方法(月1回のメールなど)を本人と決めておくと、双方の負担が少なくなります。 - 通院状況を確認する
復職の判断では、定期的に通院し、治療が継続されているかが大切な判断材料になります。 - 復職の判断は段階的に
主治医の「復職可能」の判断に加え、産業医面談やリワークプログラムの利用状況なども参考にしながら、短時間勤務などの段階的な復職を検討していただくと、再発のリスクを下げることができます。
入院や高額な治療の予定がある方へ
マイナ保険証(健康保険証として利用登録したマイナンバーカード)で受診すると、「限度額適用認定証」の申請をしなくても、窓口でのお支払いが自己負担の上限額までになります。事前の申請が不要になるため、ぜひご活用ください。
よくあるご質問
Q. 紙で申請してきた人も、途中から電子申請に切り替えられますか?
A. はい、切り替えられます。2回目以降の申請から電子申請を利用することも可能です。
Q. 退職後も傷病手当金を受け取っている場合も使えますか?
A. 使えます。退職などで資格を失った後の期間についても、加入していた当時の資格を選んで申請できます。この場合、事業主の証明は不要です。
Q. 証明書をLINEやメールで送ってもらえませんか?
A. 個人情報保護の観点から、当院ではデータでの送付は行っておりません。郵送または次回ご来院時の手渡しでお受け取りください。
まとめ
協会けんぽの電子申請は、社員の方にとっては「郵送不要・ミスに気づきやすい・進み具合がわかる」、会社にとっては「回収・郵送・問い合わせ対応が減り、休職中の社員とのやり取りも最小限にできる」という、双方にメリットのあるしくみです。
一方で、手続きがどれだけ便利になっても、傷病手当金が「治療に専念し、職場に戻るための制度」であることは変わりません。定期的な通院と、主治医と相談しながらの治療が、適切な給付と確かな回復の土台になります。
当院では、証明書を読みやすい形でお作りし、郵送または窓口でお渡しすることで、患者さんの申請がスムーズに進むようお手伝いしてまいります。また、リワークプログラムを通じて、職場復帰まで一緒に伴走いたします。証明書の作成や通院について、ご不明な点はお気軽に受付までお尋ねください。
電子申請の操作方法については、協会けんぽ「電子申請サービス」のページをご確認いただくか、ご加入の協会けんぽ各支部へお問い合わせください。
※本記事は2026年10月時点の協会けんぽの公表情報をもとに作成しています。最新の情報は協会けんぽのホームページでご確認ください。




