コラム

メトホルミンの副作用と対処法|吐き気・下痢から乳酸アシドーシスまで

メトホルミンは2型糖尿病の治療薬として広く使われています。その一方で、「飲み始めてからお腹の調子が悪い」「副作用が心配」と感じる方も少なくありません。

この記事では、添付文書の記載をもとに、メトホルミンの副作用、吐き気や下痢への対処法、受診が必要なサイン、服用できない人を整理します。

副作用でいちばん多いのは、下痢や吐き気などの消化器症状です。まれに、重い乳酸アシドーシスが起こることもあります。自己判断で飲み方を変えず、気になる症状は処方した医師に伝えてください。

目次

メトホルミンの主な副作用と起こる頻度

薬を手に取る人のイメージ

添付文書に載っている副作用のうち、頻度の高いものは消化器症状です。

分類主な副作用(添付文書の頻度)
消化器(5%以上)下痢(40.5%)、吐き気(15.4%)、食欲不振(11.8%)、腹痛(11.5%)、嘔吐
消化器(1〜5%未満)消化不良、腹部膨満感、便秘、胃炎
低血糖(5%以上)脱力感、強い空腹感、発汗など。他の糖尿病の薬との併用で起こりやすくなります
長期服用ビタミンB12の吸収不良(1%未満)
まれ・頻度不明乳酸アシドーシス、肝機能障害・黄疸、横紋筋融解症

出典:メトグルコ添付文書(JAPIC・KEGG掲載)。

消化器症状は、飲み始めや量を増やしたときに出やすいとされています。続くか、日常生活に支障が出るときは、我慢せずに医師へ相談してください。

吐き気・下痢がつらいときの対処法

食事と水分のイメージ

服用のしかたを確認する

添付文書では、メトホルミンは1日500mgから始め、1日2〜3回に分けて食直前または食後に飲むと定められています。量は効果と体調を見ながら、少しずつ調整します。

  • 飲むタイミングは、医師・薬剤師の指示どおりにする(食直前または食後)
  • 量を増やした直後に症状が出たときは、医師に伝える。減量や見直しの相談ができます
  • 自己判断で量を増やしたり、まとめて飲んだりしない

下痢や嘔吐が続くときは、脱水に注意

下痢や嘔吐が続いて水分や食事がとれないときは、脱水から乳酸アシドーシスのリスクが高まります。添付文書では、発熱・下痢・嘔吐・食事がとれないといった体調不良(シックデイ)のときは、いったん服用を中止して医師に相談するよう指導することになっています。

症状の程度ごとの目安を、表にまとめます。

症状目安となる対応
軽い吐き気、軟便指示どおり食直前または食後に飲み、水分をとって様子を見る。続く、悪化する場合は次回を待たず処方医に連絡する
下痢・嘔吐が続く、食事や水分がとれない自己判断で飲み続けず、その日のうちに処方した医師へ連絡する(シックデイ)
強いだるさ、筋肉痛、息が荒くなる、強い腹痛乳酸アシドーシスの可能性があります。服用をやめて、すぐに受診する。夜間・休日は救急外来へ

そのほかの副作用と、受診の目安

消化器症状や乳酸アシドーシスのほかにも、患者向医薬品ガイドでは次の重大な副作用と、主な症状が示されています。いくつかの症状が同じ時期に出るのが一般的とされています。

副作用主な症状どうするか
低血糖お腹がすく、冷汗が出る、血の気が引く、疲れやすい、手足のふるえ、けいれん、意識の低下糖質を含む食品や砂糖をとる。意識がうすれてきたら、ただちに受診する(アカルボース、ボグリボース、ミグリトールを併用しているときは、ブドウ糖をとる)
肝機能障害・黄疸疲れやすい、体がだるい、力が入らない、吐き気、食欲不振。白目や皮膚が黄色い、尿の色が濃い、体がかゆい気づいたら、ただちに医師か薬剤師に相談する
横紋筋融解症手足のこわばりやしびれ、脱力感、筋肉の痛み、尿が赤褐色になる気づいたら、ただちに医師か薬剤師に相談する

低血糖は、高い所での作業や車の運転中に起こると事故につながります。意識が遠のくこともあるため、メトホルミンを飲んでいることを、家族や周りの人にも伝えてください。

喉が渇く、体重が減る、立ちくらみやめまいがある、手足がつるといった脱水のサインが出たときも、いったん服用をやめて医師に相談するよう、ガイドには書かれています。利尿作用のある薬を飲んでいる方は、特に脱水に気をつけてください。

出典:メトグルコ 患者向医薬品ガイド(PMDA、2022年10月更新)。

飲み忘れたときはどうする?

患者向医薬品ガイドでは、2回分を一度に飲んではいけないとされています。飲み忘れに気づいたら、その回は1回とばして、次の時間に1回分を飲みます。

体調が良くなったからといって、自己判断で飲むのをやめたり、量を加減したりするのも避けてください。決められた量より多く飲んでしまったときは、乳酸アシドーシスが起こるおそれがあります。吐き気、嘔吐、腹痛、下痢、体のだるさ、筋肉痛、息苦しさが出てきたら、ただちに受診してください。

出典:メトグルコ 患者向医薬品ガイド(PMDA、2022年10月更新)。

乳酸アシドーシスとは?

救急対応のイメージ

乳酸アシドーシスは、血液中に乳酸がたまり、血液が酸性に傾く状態です。メトホルミンの副作用としてはまれですが、重くなると命にかかわります。添付文書の警告にも載っています。

症状

  • 胃腸の症状(吐き気、嘔吐、腹痛)
  • 強いだるさ(倦怠感)
  • 筋肉痛
  • 息が荒くなる(過呼吸)

これらは、消化器の副作用と似ています。いつもと違う強い症状が出たら、飲み続けずに、すぐ医療機関に連絡してください。

起こりやすい人と予防

添付文書では、次のような状態が危険因子とされています。

  • 腎機能障害、肝機能障害
  • 低酸素血症を伴いやすい状態(心不全・呼吸器の重い病気など)
  • 脱水(利尿薬の併用を含む)
  • 過度のアルコール摂取
  • 感染症
  • 高齢(特に75歳以上は、使うかどうかを慎重に判断)
  • 飲む前と、飲んでいる間は定期的に、腎機能・肝機能の検査を受ける
  • お酒を飲みすぎない
  • シックデイのときは、飲むのをやめて医師に相談する
  • ヨード造影剤を使う検査の前は一時的に中止し、検査後48時間は再開しない(医師の指示に従う)

メトホルミンを使えない人・注意が必要な人

診察と検査のイメージ

服用できない人(禁忌)

添付文書では、次の方には投与しないとされています。

  • 乳酸アシドーシスを起こしたことがある
  • 重い腎機能障害(eGFR 30未満)、透析中
  • 重い肝機能障害
  • 心不全・心筋梗塞・肺塞栓など、心臓や肺に高度の障害がある、または低酸素血症を伴いやすい
  • 脱水がある、またはそのおそれが強い(下痢・嘔吐、食事がとれない)
  • 過度のアルコール摂取
  • 1型糖尿病、重症ケトーシス、糖尿病性昏睡
  • 重い感染症、手術の前後、重い外傷
  • 栄養不良、飢餓状態、衰弱、下垂体・副腎の機能不全
  • 妊娠中、または妊娠している可能性がある
  • 本剤またはビグアナイド系薬剤で過敏症を起こしたことがある

慎重に使う人

中等度の腎機能障害(eGFR 30以上60未満)の方は、腎機能を頻繁に確認しながら、量の上限を下げて使います。高齢の方、利尿薬など脱水を招く薬を使っている方も、慎重な経過観察が必要です。

お酒は、乳酸アシドーシスのリスクを高めるため、過度の飲酒は避けてください。

お酒との関係

過度の飲酒は、乳酸アシドーシスが起こるリスクを高めます。添付文書では、過度の飲酒を避けるよう指導することとされ、飲酒量が多い人には使えません。

飲酒について不明な点は、処方した医師か薬剤師に相談してください。

定期的に受ける検査

メトホルミンは、腎臓や肝臓に障害があると乳酸アシドーシスが起こりやすくなります。そのため、飲み始める前と、飲んでいる間は、定期的に検査が行われます。

検査何のために受けるか
腎機能(eGFRなど)腎臓の働きが落ちていないかを確認する。結果によって、飲んでよいか、量をどうするかを決める
肝機能肝臓に障害が出ていないかを確認する
血糖値、尿糖など2型糖尿病の治療として効いているかを確認する
ビタミンB12(必要に応じて)長く飲み続けると吸収が悪くなることがある。貧血やしびれが気になるときは医師に伝え、調べるかどうかは医師が判断する

ヨード造影剤を使う検査を受けるときは、検査前に服用が一時的に中止され、検査後48時間は再開しません。検査を受けるときは、メトホルミンを飲んでいることを必ず伝えてください。

出典:メトグルコ 患者向医薬品ガイド(PMDA、2022年10月更新)、メトグルコ添付文書(JAPIC・KEGG掲載)。

長期で飲むときに気をつけること

定期検査のイメージ
  • ビタミンB12:長期の服用で吸収が悪くなることがあります。貧血やしびれなどが気になるときは、医師に伝えて検査を受けてください
  • 低血糖:インスリンや他の糖尿病薬と併用しているときは、低血糖に注意が必要です。車の運転や高所作業のときは特に気をつけます
  • 定期検査:腎機能・肝機能など、医師が必要と判断した検査を定期的に受けます

添付文書には、2型糖尿病で3〜4か月投与しても効果が不十分なときは、他の治療法への切り替えを検討するという趣旨の記載があります。見直しは医師が判断します。

糖尿病の治療とこころの不調

相談のイメージ

糖尿病は長く付き合う病気で、副作用や血糖値への不安から、気分の落ち込みや眠れなさが出ることがあります。身体の治療だけでなく、こうした気持ちの負担に目を向けることも、治療を続けるうえで大切です。

惟心会(月島院・豊洲院)は、精神科専門医10名以上が在籍するクリニックです。気分の落ち込み、不安、不眠などについて相談できます。メトホルミンの副作用や飲み方については、処方している医師・薬剤師にご相談ください。

まとめ

  • いちばん多い副作用は下痢・吐き気などの消化器症状。飲み始めや増量時に出やすい
  • 服用は、1日500mgから、食直前または食後に分けて飲むのが基本
  • 下痢・嘔吐で水分がとれないとき(シックデイ)は、飲み続けず医師に相談する
  • 強いだるさ、筋肉痛、息が荒い、強い腹痛は乳酸アシドーシスの可能性があり、すぐ受診する
  • 腎臓・肝臓の病気がある人、飲酒が多い人、妊娠中の人などは使えない
  • 飲み忘れたときは1回とばし、2回分を一度に飲まない
  • 飲む前と飲んでいる間は、腎機能・肝機能などの検査を定期的に受ける。過度の飲酒は避ける

よくある質問

メトホルミンの副作用はいつ出ますか?

消化器症状は、飲み始めや量を増やしたときに出やすいとされています。ビタミンB12の不足のように、長く飲み続けてから問題になるものもあります。

吐き気や下痢が出たら、どうすればいいですか?

指示された飲み方(食直前または食後)を確認し、水分をとって様子を見てください。続くとき、量を増やした後に出たときは、医師に相談してください。下痢や嘔吐で水分や食事がとれないときは、飲み続けずにその日のうちに連絡しましょう。

メトホルミンを飲めない人はいますか?

います。重い腎機能障害・肝機能障害のある方、脱水のある方、過度の飲酒をする方、妊娠中の方、1型糖尿病の方などは使えません。詳しくは「使えない人・注意が必要な人」をご覧ください。

乳酸アシドーシスが疑われたら、どうしたらいいですか?

強いだるさ、筋肉痛、息が荒い、強い腹痛や嘔吐があるときは、飲むのをやめて、すぐに医療機関を受診してください。夜間や休日は救急外来を利用します。

飲み忘れたら、2回分まとめて飲んでもいいですか?

いいえ。2回分を一度に飲んではいけません。飲み忘れに気づいたら、1回とばして、次の時間に1回分を飲んでください。

メトホルミンを飲んでいる間、お酒は飲めますか?

過度の飲酒は乳酸アシドーシスのリスクを高めるため、避けてください。飲酒について不明な点は、処方した医師か薬剤師に確認しましょう。

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