コラム

【健康講話 2026年3月】 健診結果を”活かす”読み方その2 ― 受診の判断と、将来の健康管理に役立てるために

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前回は、BMI、血圧、脂質、血糖、肝機能といった、生活習慣病に関係する主要項目について解説しました。

今回は、普段あまり意識されにくいものの、長期的な健康管理の観点から重要な、

  • 腎機能
  • 尿検査
  • 貧血
  • 心電図
  • 胸部X線

について整理します。

目次

腎機能(クレアチニン・eGFR):腎臓の「ろ過能力」

参考基準値(日本人間ドック学会など)

  • eGFR:60 mL/分/1.73㎡ 以上(目安)
  • クレアチニン:
    男性 約0.65〜1.07 mg/dL
    女性 約0.46〜0.79 mg/dL(施設差あり)

腎臓は、体内の老廃物や余分な水分を排出する、重要な役割を担っています。

eGFRは、腎臓のろ過機能を推定する指標であり、数値が低下するほど、腎機能が低下している可能性を示します。高齢になるにつれてeGFRは自然に低下する傾向があり、年齢や経年変化を踏まえた評価が重要です。

腎機能の低下は、高血圧や糖尿病と密接に関連しており、心血管疾患のリスクとも関係することが知られています。

健診でeGFRの低下を指摘された場合には、一度医療機関で評価を受け、経過や背景因子を確認しておくことが、今後の健康管理の観点から重要です。

尿検査(尿蛋白・尿潜血・尿糖):体からの基本的なサイン

参考基準値(日本人間ドック学会など)

  • 尿蛋白:陰性
  • 尿潜血:陰性
  • 尿糖:陰性

尿検査は、腎臓や尿路の状態、糖代謝の状態を、比較的早い段階で反映する検査です。

尿蛋白陽性は、腎臓のフィルター機能に変化が生じている可能性を示すことがあります。

尿潜血は、尿路結石や炎症など、さまざまな原因でみられることがあり、持続する場合には、追加評価が推奨されます。女性では月経の影響で一時的に陽性となることもあり、再検査で確認することが大切です。

尿糖陽性は、血糖が一定以上になると出現することがあり、糖代謝異常のサインとなる場合があります。

健診で尿検査異常を指摘された場合には、一時的な変動かどうかも含めて、再検査や医療機関での評価により、状態を確認しておくことが望まれます。

貧血(ヘモグロビン):酸素を運ぶ力

参考基準値(日本人間ドック学会など)

  • ヘモグロビン:
    男性 13.0 g/dL 以上
    女性 12.0 g/dL 以上

貧血は、血液中のヘモグロビンが低下し、体内への酸素供給が低下した状態を指します。

女性では、月経に伴う鉄欠乏が原因となることが多く、比較的よくみられます。

一方で、男性や閉経後の女性で貧血がみられる場合には、消化管からの出血など、背景に別の要因がある可能性も考慮されます。

健診で貧血を指摘された場合には、原因を確認することで、体調の改善や、必要に応じた治療につながることがあります。

心電図:心臓のリズムと電気の流れを読み解く

参考所見

  • 洞調律(正常リズム)
  • 明らかな異常所見なし

心電図は、心臓が動くときに発生する電気信号を記録し、心臓のリズムや電気の伝わり方を評価する検査です。

健診の心電図で分かるのは、主に次のような点です。

  • 不整脈(脈の乱れ)
  • 伝導障害(電気の流れの遅れやブロック)
  • 心筋虚血を疑う所見(心臓の血流不足のサイン)
  • 心肥大を疑う所見

不整脈には、経過観察で問題ないものから、精密検査が必要なものまで、さまざまなタイプがあります。

また、高血圧が長く続いている場合には、心臓の筋肉が厚くなる「心肥大」を示唆する所見が、心電図に現れることがあります。これは、心臓に長期間負荷がかかってきたサインとして、生活習慣や血圧管理を見直すきっかけになります。

さらに、糖尿病や脂質異常がある方では、自覚症状がなくても、心筋虚血を疑う所見が見つかることがあります。このような場合には、負荷心電図や心エコーなど、追加検査による評価が検討されます。

健診の心電図は、「今すぐの異常」を見つけるだけでなく、心臓にかかってきた長期的な負担を振り返る指標としても重要な役割を果たしています。

なお、安静時心電図が正常であっても、すべての心疾患や狭心症を完全に否定できるわけではありません。症状がある場合には、結果にかかわらず医療機関での相談が重要です。

胸部X線:肺と心臓、胸の中の全体像を確認する

参考所見

  • 明らかな異常陰影なし
  • 心胸郭比 正常範囲

胸部X線は、肺と心臓を中心に、胸の中の構造を広く確認できる、基本的なスクリーニング検査です。

胸部X線で評価している主なポイントには、

  • 肺野の陰影(肺炎、腫瘍、結核など)
  • 肺の過膨張や線維化の所見
  • 心臓の大きさ(心拡大)
  • 胸水の有無
  • 大血管のシルエット

などがあります。

心胸郭比(CTR)は、胸郭に対する心臓の大きさの比率で、一般に50%未満が目安とされます。心臓が大きく見える場合には、

  • 高血圧
  • 心不全
  • 心筋症
  • 弁膜症

などが背景にある可能性があり、必要に応じて心エコーなどの追加評価が行われます。

また、喫煙歴のある方では、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を示唆する所見や、肺がんなどの異常所見の拾い上げという点でも、胸部X線は重要な役割を担っています。

近年はCT検査の精度が注目されがちですが、胸部X線は、

  • 被ばくが少ない
  • 簡便
  • 毎年の経年変化を追いやすい

という点で、長期的な健康管理において、非常に有用な検査と位置づけられています。

心電図と胸部X線は、その年の「異常」を見る検査であると同時に、毎年の積み重ねによって、心臓や肺の”変化の履歴”を確認できる検査でもあります。経年的にデータを残していくこと自体が、将来の早期発見につながる、大切な意味を持っています。

あらためて 健診結果は「将来の健康管理のための情報」

健診では、自覚症状がほとんどない段階の変化が見つかることが少なくありません。「症状がないから大丈夫」ではなく、「症状が出る前に気づけた」と前向きに捉えることが、将来の健康管理につながります。

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