【健康講話 2026年11月】お酒の常識、アップデート!― 知っているようで知らない!? アルコールと健康の話 ―

忘年会や新年会など、お酒を飲む機会が増える年末年始。毎日忙しいみなさんにとって、お酒を楽しむ時間は、気分転換やリフレッシュの機会にもなります。
一方で、何気ない飲み過ぎや寝酒が、睡眠の質や翌日のコンディション、さらには長期的な健康に影響することもあります。
お酒をよく飲む方も、飲まない方も、アルコールと健康に関する知識をアップデートして、年末年始のお酒との付き合い方を少し考えてみませんか。
「お酒と健康」の最新常識
かつては「酒は百薬の長」と言われ、少量のお酒なら心血管疾患などのリスクを下げ、健康によいとする「Jカーブ効果」が注目されてきました。しかし、近年の医学研究の進展によって、この従来の考え方が見直されています。
過去の研究では、「お酒を飲まない人」のグループに、病気などを理由に飲酒をやめた人が含まれていたことが指摘されています。そのため、飲酒しない人の健康状態が、実際より悪く見えていた可能性があります。
こうした問題や生活習慣などの違いを考慮した近年の研究では、少量飲酒による明確な延命効果は確認されていません。
「健康のために積極的にお酒を飲むことを勧める医学的根拠はない」というのが、現在の医学的な考え方です。
また、世界保健機関(WHO)の専門機関である国際がん研究機関(IARC)は、アルコール飲料を発がん性のあるものに分類しています。飲酒による発がんリスクについて、少量であれば安全といえる明確な基準は確立されていません。
もちろん、これは「一口も飲んではいけない」という意味ではありません。大切なのは、健康への影響を理解したうえで、自分に合った飲み方を考えることです。
「お酒に強くなった」の落とし穴
お酒を飲むと、すぐに顔が赤くなる人がいます。これは、アルコールの代謝過程で生じる「アセトアルデヒド」を分解する酵素(ALDH2)の働きが、遺伝的に弱いことなどが主な原因です。
一方、飲酒を続けるうちに、以前より酔いにくくなったと感じることがあります。これは、アルコールの作用に身体が慣れる「耐性」が生じるためです。
また、以前は飲酒すると顔が赤くなっていたのに、最近は赤くなりにくくなったと感じる人もいます。しかし、こうした変化があっても、遺伝的に決まっているアセトアルデヒドの分解能力が改善したわけではありません。
酔いにくくなったからといって、身体への負担が減ったわけではありません。 アルコールによる肝臓や血圧などへの影響はなくならず、飲酒量が増えることで、むしろ健康リスクが高まる可能性があります。
「お酒に強くなったから大丈夫」と過信せず、自分の体質と飲酒量の両方に目を向けることが大切です。
寝酒は本当に快眠の味方? 睡眠の質と翌日の仕事への影響
「お酒を飲むとスムーズに眠れるから」と、就寝前にお酒を飲む習慣はありませんか。
アルコールには、中枢神経の働きを抑え、寝つきをよくする作用があります。そのため、お酒を飲むと眠りやすくなるという実感は、必ずしも間違いではありません。
しかし、「寝つきがよいこと」と「質のよい睡眠がとれること」は、同じではありません。
私たちの睡眠は、「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」が交互に訪れることで構成されています。
ノンレム睡眠には浅い眠りから深い眠りまでの段階があり、特に深いノンレム睡眠は、身体や脳の休息に重要な役割を果たします。
一方、レム睡眠は、身体の筋肉が緩んでいるものの脳は比較的活発に働いている状態で、記憶の整理や感情の処理に関わると考えられています。
飲酒は、こうした睡眠のリズムに影響します。レム睡眠が始まるまでの時間が長くなったり、レム睡眠時間が短くなったりすることが知られており、飲酒量が多いほど、その影響が大きくなる傾向があります。
また、睡眠後半には眠りが不安定になり、途中で目が覚めやすくなることもあります。
さらに、アルコールによって喉の周囲の筋肉が緩むと、いびきや睡眠時無呼吸が悪化する場合もあります。
つまり、お酒を飲んですぐに眠れたとしても、夜間の睡眠が妨げられ、翌朝の疲労感や日中の眠気、集中力や注意力の低下につながる可能性があるのです。
寝つきが悪いときには、寝酒に頼るのではなく、就寝1〜2時間前に40℃前後のぬるめのお湯に入浴するなど、自然な眠気を促す習慣を取り入れてみましょう。不眠が続く場合には、その背景にある原因を確認することも大切です。
コラム①:ちょっと知っておきたい! お酒を飲むと、なぜトイレが近くなる?
お酒を飲むと、トイレが近くなったり、喉が渇いたりすることはありませんか。
実は、アルコールには、尿量を調節する「抗利尿ホルモン(バソプレシン)」の分泌を一時的に抑える作用があります。このホルモンは、腎臓で水分を再吸収し、尿として排出される水分量を抑える働きをしています。
アルコールによってその分泌が抑えられると、腎臓で再吸収される水分が減り、尿量が増えやすくなります。
つまり、お酒を飲むとトイレが近くなるのは、飲み物の量だけでなく、アルコール自体の利尿作用も関係しているのです。
尿量が増えると、身体の水分が失われ、喉の渇きにつながることもあります。飲酒時には適度な水分補給を心がけましょう。ただし、水を飲んでもアルコールの分解が速くなるわけではありません。
健診結果の数字で気づく! お酒の影響が出やすい検査項目
年に1回の健康診断は、日頃の飲酒習慣が身体にどのような影響を及ぼしているかを振り返る機会にもなります。
飲酒について、特に注目したいのは、次の項目です。
※以下の数値は、一般的な健診の判定目安、または疾患の診断基準を示したものです。検査項目によって基準の意味が異なり、健診機関によって判定基準が異なる場合もあります。実際の健診結果は、各健診機関の判定基準と併せて確認してください。
肝機能:γ-GTP、AST(GOT)、ALT(GPT)
● γ-GTP:参考値 男性50 U/L以下、女性30 U/L以下
飲酒習慣の影響を受けて上昇することがあるため、日常的に飲酒する方には注目していただきたい項目です。
ただし、脂肪肝や胆道系の病気など、飲酒以外の原因でも上昇します。また、飲酒量が多くても正常値を示す場合があり、数値が正常だからといって、飲酒による健康への影響がないとは限りません。
● AST・ALT:参考値 それぞれ30 U/L以下
肝細胞などに含まれる酵素で、肝臓に障害が生じると血液中の数値が上昇します。飲酒による肝障害のほか、脂肪肝などでも上昇するため、肝臓の健康状態を確認するうえで重要な項目です。
脂質:TG(中性脂肪)
参考値:空腹時150 mg/dL未満
アルコールは肝臓での中性脂肪の合成を促すため、飲酒量が多いと中性脂肪が上昇することがあります。高値が続く場合は、飲酒量だけでなく、食生活や体重なども含めた確認が必要です。
尿酸値:UA(尿酸)
高尿酸血症の診断基準:7.0 mg/dL超
アルコールは尿酸の産生を増やし、腎臓からの排泄を妨げる方向に働くため、尿酸値を上昇させることがあります。
ビールに限らず、アルコールそのものにも尿酸値を上げる作用があるため、プリン体ゼロのお酒でも注意が必要です。
血圧:収縮期・拡張期血圧
高血圧の診断基準:診察室血圧140/90 mmHg以上、家庭血圧135/85 mmHg以上
習慣的な飲酒は血圧を上昇させる要因の一つです。飲酒量が多い方では、飲酒量を減らすことによって血圧の改善が期待できる場合もあります。
なお、厚生労働省の「健康日本21」では、生活習慣病のリスクを高める飲酒量の指標として、1日当たりの平均純アルコール摂取量が男性40g以上、女性20g以上という基準を用いています。
ただし、これは「この量までなら健康への影響がない」という意味ではありません。飲酒による健康リスクは、飲酒量が少なくても生じる場合があります。
健診結果は、単年度の数値だけでなく、過去からの変化にも注目し、日頃の飲酒量を振り返るきっかけにしてみましょう。
コラム②:「糖質ゼロのお酒なら太らない」は本当?
最近は、糖質ゼロや糖質オフのお酒をよく見かけます。しかし、糖質がゼロでも、アルコール自体にエネルギーがあることをご存じでしょうか。
アルコールは1gあたり約7kcal。実は、糖質(4kcal/g)よりもエネルギー量が多いのです。
例えば、ビール500mL(アルコール度数5%)に含まれる純アルコールは約20gで、アルコール由来のエネルギーだけでも約140kcalになります。
つまり、糖質ゼロのお酒でも、カロリーゼロとは限りません。
お酒を選ぶときには、糖質だけでなく、アルコール度数や飲む量にも注目してみましょう。
今日から実践! お酒と上手に付き合う6つの工夫
忘年会や新年会が続く時期には、普段よりも飲酒量が増えがちです。翌日の体調や長期的な健康を考えるうえで、大切なのは、飲酒量を増やしすぎないことです。
そのために役立つのが、「純アルコール量(g)」で飲酒量を把握するという考え方です。
純アルコール量(g)= 飲酒量(mL)× アルコール度数(%)÷100 × 0.8
例えば、ビール500mL(5%)には約20g、アルコール度数9%の缶チューハイ500mLには約36gの純アルコールが含まれています。
同じ500mLでも、アルコール度数によって身体に取り込まれるアルコール量は大きく異なります。なお、病気で療養中の方や服薬中の方は、飲酒の可否について主治医や薬剤師に確認しましょう。
では、日常生活の中で無理なく飲酒量を管理するためには、どのような工夫ができるでしょうか。
空腹のまま飲まない
食事と一緒にお酒を楽しむことで、アルコールの吸収を緩やかにし、血中アルコール濃度の急激な上昇を抑えることが期待できます。
和らぎ水(チェイサー)を用意する
お酒の合間に水やお茶を飲むことは、飲酒のペースを落とし、飲酒量を抑えるための一つの工夫です。ただし、水を飲むことで二日酔いを確実に防げるわけではありません。
自分のペースで楽しむ
周囲の飲酒ペースに合わせる必要はありません。飲む量やペースを自分で決め、ノンアルコール飲料を挟むなど、無理のない飲み方を心がけましょう。
休肝日をあらかじめ予定に入れておく
「飲み会がない火曜日と木曜日は休肝日」など、お酒を飲まない日を先に決めておくと、習慣にしやすくなります。
休肝日を設け、1週間を通じたアルコールの総摂取量を減らすことで、身体への負担を軽減することが期待できます。ただし、休肝日があるからといって、ほかの日に多量飲酒をしてもよいわけではありません。
ノンアルコール飲料を活用する
最近は、味わいを楽しめるノンアルコール飲料も充実しています。普段のお酒を置き換えることで、無理なくアルコール摂取量を減らすことができます。
お酒以外の夜の楽しみを見つける
温かい飲み物を楽しむ、好きな本を読む、ゆっくり入浴するなど、お酒以外にもリラックスできる時間を用意してみましょう。
なお、飲酒後は、本人が酔いを感じなくなっていても、アルコールが体内に残っている場合があります。また、アルコールが消失した後でも、二日酔いによって注意力や判断力が低下することがあります。
翌日の運転や危険を伴う作業には、特に注意が必要です。
年末年始を迎えるこの機会に、ご自身の飲酒量や飲み方を少し振り返りながら、お酒との心地よい付き合い方を見つけてみてはいかがでしょうか。




